挨拶

2009年7月10日金曜日

電車内で

ちょっと前、地下鉄に乗ってたとき携帯でWikipedia見てたら、
「携帯、使えるの?」
と見知らぬおじいさんに声をかけられた。
「前にダウンロードしたのを見てるだけなので。電波は届いてません」
みたいな事を答えると、分かったのかどうかは知らないが頷いた。
会話は終わったはずだが、この足腰が丈夫そうな元気なおじいさんは、なぜかこんな事を言ってきた。
「この前うちのばあさんがバイクにひかれてよ」
「はい?」
電車内なので雑音が多く聞き取りづらかった。
「ばあさんが、わしの嫁さんだが、バイクにひかれたんだ」
「はい」
「一緒に歩いとって、バイクが突っ込んできて、ばあさんは脚が千切れちまって」
「うわあ、それは酷いですね」
おじいさんは頷く。
「でな、バイクに乗っとった奴は逃げちまったんだ」
「酷いですね」
また頷く。
「それでな、わしはもうだめだと思ったんだけど、医者が助かる言うもんだから、今県立病院におるで、見に行くところなんだわ」
「そうなんですか」
「ずっと寝とったんだけど、目ぇ覚ましてな、まだ脚がないことは言っとらんのだけど」
「へぇ」
「今は良い義足があって、歩けるようにはなるらしいんだけど、なにしろばあさんだから時間がかかるらしい」
「回復力の問題ですね」
「リハビリとかしてな」
「はい」
「君は何区に住んどるの?」
「あ、僕はここには住んでないです、──市です」
「何?」
「──市」
「ああ、そうか。わしは──区なんだけどな、──区知っとる?」
「ええ、一応」
「わし原爆落ちたとき兵隊で広島(長崎? 忘れた)行っとってな」
「そうなんですか」
「ああ、でな、わしは運が良いんだ、──区から広島に行った12人の中で、助かったのはわしだけだからな」
「それはすごいですね」
「ここ、見てみ」
と言って手を見せる。
「黒くなっとるやろ」
ぽつぽつと黒い点が見えた。
「はい」
「原爆でこうなったんだ」
と、ここで僕は目的の駅に到着。おじいさんも降り、別れた。
(細かいとこは忘れちゃったので間違ってるかもしれません)